貿易事務

貿易事務が2020年東京オリンピックに向けてすべきこと

 

こんにちは有坂です。

ついに来ました2020年、今年は東京オリンピック開催の年ですね。

東京オリンピック開催が決まった当初は

「親世代から話しか聞いていなかった東京でのオリンピックが自分も見ることができるなんて」

「うわー短距離とかそのスピード感肉眼で見てみたい!」

などなど様々な前向きなことを思っていたのですが

チケットは当たらんし、唯一見れそうだったチケットなしでもチラ見できそうだった競技東京でないところで開催になるわで(東京夏の暑さハンパないから仕方ないけれど)段々と現実に向き始めた2019年。

なんとなく思っていたけれど周りもザワつきだしました。

貨物ちゃんと動かせるかな…問題。

今回は2020年東京夏の陣をくぐり抜けるにはどうするか!を考察していきたいと思います。

 

オリンピック単品ではない!夏休みとお盆のフルコンボ

今年の夏はオリンピックで大盛り上がりですが、いつもの夏にプラスされただけで
オリンピックがある代わりに夏休みないしお盆もないなんてことはありません。

いつも通り夏休みもあるし、お盆もあるし、オリンピックもある。

これが2020年の夏です。

一般的に夏休み、お盆の消費に備えて「その前」が忙しくなる企業さんは多いのではないでしょうか?
わたくし有坂は食品会社に勤めており、現在は主に輸入関連の仕事が多いのですが毎年上半期はこんな感じで進んでいます。

4月 3月までに止めてた搬入が一気に入ってくる。
GW前の搬入に追われる
異動してきた人や新入社員ちゃんたちの不慣れな感じもフォローしつつ仕事を進めてく

5月 GWが過ぎ去ってひと段落

6月 貨物の搬入ペースは緩やかながらも少しずつ搬入量が増えてくる

7月 3月期決算のため6末で第一四半期決算を迎える。決算処理をしつつ夏目前で大量に貨物が輸入されてくる。

8月 夏休み突入、お盆目の前、台風来て船遅延する(まじか。。。)でもなんとかする

9月 夏の後半はやや貨物の量が落ち着くものの、何気に祝日がポコポコある(しかも数年に一度はまあまあな連休)ため
微妙に貨物の扱いが多くなる。

 

といった流れです。

今年はこれにプラスして

オリンピック

という大きな大きなイベントがあるわけですね。

すでに企業さんによってはどのように対応していくべきか上からの指示があるでしょうが、上の方々というのは大体現在の実務の実態をご存知ない方が多いと感じます。
(彼らが実務や現場で動いていたのは10年くらい前だったりしますからね)

そのため同僚と連携して実務担当者だからこそわかることを総動員させて

どのように対応していったら良いか

を考える必要があるなぁと感じています。

生産数と搬入スケジュールを詰める

この生産数を決める、搬入スケジュールを決める仕事は有坂はしておりません。
どちらかといえば取引先と営業担当者がやり取りをして決めています。

しかしサポートできる部分はあると思っています。

例えば異動してきたばかりであまり貿易の知識がない営業担当者であったり、
貿易関連経験が1、2年だと基本はわかるけど「〇〇になりそうだから▲▲しておこう」といったところまで気づけない担当者やあとは性格的に「営業以外のこと苦手です」という担当者などなど、

少なからず一人くらいいませんか?職場に。

もしかしたら「オリンピックで今年はいつもと違って忙しいかもなぁ」くらいは感じているかもしれなけれど

特に何もしていないかも

いや、目の前の仕事でいっぱいいっぱいなのかもしれません。

有坂ができることというと

・保税貨物を入れる倉庫の担当者と色々想定話をして、どのように進めていったら貨物をスムーズに受けてくれるか

・フォワーダーの担当者と色々想定話をしてどんな情報がいち早くあったほうがいいか、通常〇〇日でできることが何日くらい余裕見ておいたほうがいいか

・営業担当者に何か新しいものを輸入しようとしていないか

・検査対象の貨物が夏間際に搬入する予定あるか

 

などなどです。

結果無事に貨物の納品をする

そのためにできることの想定をできる限りします。

その結果を営業担当者に伝えて逆算で生産数や搬入スケジュールを輸出者側と交渉してもらいます。

オリンピックまであと半年切っているので対象の貨物によってはこれからの調整が難しいもののあるかもしれませんが可能なものは積極的に生産数、搬入スケジュールの調整を行うようにするのが今年の夏の乗り越え山場の一つであることは間違い無いでしょう。

昨年、日本ではラグビーの大会が開催されましたがその際も海外からたくさんの方々が来日しました。
試合会場だけでなく、パブリックビューイングなどを実施したスポットや試合の観戦ができる飲食店では多くのお客さんで盛り上がっていました。

ビールを切らすな

という言葉をネットニュースやTVなんかで幾度と耳にしましたね。

より規模の大きなオリンピックではもっと多くの方が来日します。
ということはそれだけ消費が例年より高くなることが予想されます。

通関時の検査も要注意!

輸入する貨物にはモノによって、どこの国から輸入するかによって、その他様々な理由で
輸入通関時に検査が発生することがあります。

検査内容や、検査にかかる日数も輸入するモノにより実に様々です。
もちろん検査の結果を無事パスしないと通関することはできません。

有坂が日頃携わっている貨物は

日本に入船

→保税倉庫に入庫

→貨物の中から無作為で検査機関の方がいくつか抜き取り(検体となる数個をとります)

→数日後検査の結果が出る→通関申告

といったスケジュールで進みます。

日本に入船、保税倉庫に入庫するまでが遅れてしまうとそれだけ検査の開始も遅れてしまします。

結果納期までに通関が切れない、といったことも発生してしまうかもしれません。

毎回必ず検査をしなければならない貨物であればまだ頭に入っているからいいのですが
気をつけなければならないのが年に1回受験が必須、といった頻発しない検査です。

目の前の業務に追われていたり、オリンピック対策のようなイレギュラーなことに意識を奪われていると普段なら気にかけていることが頭から抜けてしまう、ということは多いにありますよね。

ちょうど急いでいる時にその年に1回にのタイミングにぶち当たってしまった…。
なんてなったら大変です。貨物納品の調整に追われてしまいます。

また同様に初めて輸入してくる貨物も注意が必要です。
どんな原材料で何が添加されているか、どんな製造工程をたどっているかで検査の有無も変わってきます。
また、検査内容(検査の項目)、検査結果の出るまでの期間も変わってきます。

そのためオリンピック問わず繁忙期前には確認しておいたほうが良いことですね。

最重要!?ドレーと保税倉庫と運送便

今年のオリンピック期間中(前後も含めたほうがいいですね)で最も重要かもしれないことは

コンテナ運送・通関後の内貨貨物の配送

ではないかと言われています。

それもそうですよね、東京はただでさえ混雑していている地域です。
そこに大勢の観光客が訪れ、また選手や大会関係者、マスコミの移動などとにかく交通量が増えると予想されています。

また一部区間(高速道路と下道)で交通規制も実施されますね。

その上オリンピックとは少し話がそれますが以前からコンテナ数の増加にコンテナを運送するトラック(ドレージ)が追いつかなくなってきている、足りなくなっていることと、

トラック運転手の人手不足問題もあり、東京、横浜、大阪、神戸といった主要港ではドレーが慢性的にスムーズにいかなくなってきています。

少し前から同僚やフォワーダーなど仕事関連の方々と話していると

・道路が規制かかっているから内貨貨物が倉庫から出ていかない
・倉庫が開かないからスペースがなくコンテナを倉庫に持っていけない
・コンテナが出ないからCYにコンテナたまる始める
・ドレーもコンテナ運べないからと運びたがらない
・CYパンク
・CYパンクしてコンテナ船からコンテナ下ろせない
・コンテナ下ろせないから船着岸できない
・え、主要港だけど抜港の可能性あり??

といったネガティブ妄想がすごいです。

同業の方と話をしているとやはり東京港につけていた貨物を地方港に上げ始めている話を聞きます。
なかなか慣れないところに揚げ始めたため、スムーズに業務がいかないこともしばしばあるようですが…
対策方法が限られますし地方港の業者の方となんとか連携をとって乗り越えていくしかありません。

そしてどうしても東京、横浜に向く貨物も残るでしょう。
いつも通りにいかないことは前提で、フォワーダー、倉庫の方とこまめに些細なことでも情報共有し極力スムーズに貨物を搬入できるように努める、これとても大事だと感じます。

有坂は新人のことフォワーダーや倉庫の方に、下記に記載している1〜4の情報が先にあると、助かると教わりました。

「先にあると」、というのは船積書類を輸出者から手に入れる前にということです!

1、ETA(入船予定日)揚げ地、本船名、フリータイムの期限

貿易関連の仕事に少しでも触れている人にとっては基本中の基本ですが
いつ日本のどこの港になんていう名前の船で到着して、CY(コンテナヤード)から貨物をとる期限がいつまでか」という情報は必ず必要です。

そしてこれらの情報は船積み書類が作成される前に輸出者に側でわかる情報です。

2、コンテナのサイズ

昨今貨物の運送ではコンテナという大きな箱に貨物を詰めて運ぶのが主流です。
(コンテナに入るものはですが)

このコンテナにはサイズ20フィーター、40フィーター、ちょっと背の高いハイキューブなどサイズがあります。

積まれてくる貨物がどのサイズのコンテナに乗ってくるかで
CYから保税倉庫に運ぶなでの車の手配や、倉庫側の作業スケジュールも変わってきます。

コンテナにはそれぞれ番号があり、「コンテナNo.」言いますが(まんまですね…)
コンテナNo.がわかれば出船後にこのコンテナが今どこまで運ばれているか、といった輸送状況をインターネットで確認することができます。

輸出側から貨物が出る数日前にはコンテナNo.がわかっているはずなのでこちらも合わせて確認しましょう

3、コンテナの中身

どんな貨物が積まれてくるか、貨物の詳細はもちろん必要です。
詳細なので単に「●●」が積まれています、だけでは事前情報としては足りないですね。

●●という商品が、

・約何個積まれている
・約何キロ(何トン)である
・コンテナ内すべて同じ商品であるor他の商品も一緒に積まれている(合い積みと言います)
・合い積みの場合●●はドア側に積まれているか、奥側に積まれているか
・倉庫に入れた際に仕分けが必要か(例えば賞味期限ごと、独自の生産ロットごと、箱の色ごとetc…)

このくらいはあった方が良いですね。

輸出者によってはきっちり貨物の数量を事前に連絡してくれることもあれば大体の数を連絡してきたりと実に様々です。

事前に「1000個」だよといってた商品が「詰めたから1050個積んだ」なんてこと、あったりします、有坂は。

もちろん正確性の高い情報であればあるほど良いですが
事前情報段階では大体どのくらいの数が積まれる、といった情報だけでもなんの情報がないよりかはマシです。

またコンテナ内の「どの辺りに何が何個積まれているか」といった明細表もあるとデバン時に倉庫の方の作業効率も上がります。結果申告までたどり着く時間も短縮できますので搬入数量がそれなりに多い場合や混載している時は特に、輸出者から明細をもらうことをお勧めします。

4、BLNo. SWBNo. BOOKING INFORMATION

有価証券機能を持つBL(ここでは詳細割愛します)、もしくはSeeWayBill(有価証券機能のない運送状)、
必ず貨物の輸送に必要な書類ですが、こちらも番号だけでも先に輸出者から情報入手しましょう。

書類そのものがなくても番号があれば貨物の状況等を確認することができます。

もしもBL No.をもらえることができなそうでされば
輸出者側に「BOOKING INFORMATION」をもらえるか聞いてみることもおすすめです。

その名の通り船を予約した際の情報なので後々に変更(出船日などが)ある可能性もありますが
bookingには、ETD(出船日)、ETA、本船名、BOOKING No、が記載しています。またどこの船会社かもわかりますね。ヘッダーに大体会社名が書いてあるので。

東京港揚げといっても東京港にはいくつかコンテナを下ろす場所があり、どこの船会社の船に乗ってくるかで貨物の降りる場所は変わってきます。

そういった情報も事前にキャッチできます。
また船会社によってはbooking Noの「このアルファベットがこう変わるとBLNoになる」といった風にしているところもあります。
そのためBOOKING INFORMATIONから様々な情報が事前に得られるのです。

輸入者も、保税倉庫も、フォワーダーも、事前に知っていれば準備できることいっぱいあります。

結論、基本的な作業とコミュニケーションが何より大事!

どんな仕事でもそうかもしれませんが、結局のところコミュニケーションを心がけることで円滑に仕事を進めることができます。

貿易事務の仕事をし始めた頃、まず最初に教わったことが「船積書類」についてでした。
確かに書類の理解ができていないと仕事は何もできないといっていいほど貿易事務の仕事にとって書類の内容理解・どのように処理していかなければならないかということは大事です。

そこができるようになったら、もう一歩先に進んで、「この人にとってどんな情報があれば有益だろうか」ということを考えてみるといいです。

「以前●●のようなことを言っていたから、こういう情報あった方がいいんだろうな」と感じ取ることも良いですが

「倉庫さんにとってどんな事前情報があったらいいか」
「フォワーダーさんにとってどんなことを前もって伝えておけばいいか」

を直接聞くのが一番いいです。

有坂は10年ほど業務歴がありますが全然聞きます。
なぜなら自分の認識違いがあるかもしれないし、日々世界は変わっているので
以前と変わり今はこういう情報があると助かる」なんてこともあるからです。

いかがでしたでしょうか、
今回の2020年オリンピックに向けての対策は私の今までの業務経験上でお話したものなのです。

なのであくまで一例です。

輸出入の対象となる貨物によって業界も異なってくるので今回の対策以外にもやった方がいいこと、いっぱいあると思います。

また今現役で働いている多くの人は「東京でオリンピック」は初めての経験です。
想定外のことに直面する可能性はとても高いです。

その「想定外のこと」に直面した際に、適切な対応が取れるよう、
事前に考えられることの準備は万端にして、少し自身に余力を持たせられるようにしておくことが最大の対策と感じます。

最後に(ほぼ自分自身への戒め)

貿易実務経験者からしたらめちゃくちゃ基本的な情報だけに聞こえたかもしれません。
しかし経験者が陥る思わぬ落とし穴は経験からくる怠慢です。

「基本的」と認識している行動を割愛したり、見落としたりしてしまいがちなのはそこそこ経験を積んだ後です。

「大丈夫、わかっている」

「いつもの流れと一緒だよね」

一番危険です。
有坂自身、それで失敗しました。

 

ここに書いている以上(いや書いてなくてもですが)自分自身「経験からくる怠慢」に陥らないよう日々仕事に努めていきたいと思います。

今回の記事が少しでもご参考になれば幸いです。