通関士

通関士は残業が多いのか

こんにちは
有坂です。

貿易業界は結構残業が多めなことが多く、貿易事務職である私も繁忙期はもちろんイレギュラーなことがよく発生して残業になってしまうこと度々あります。となると通関士さんもきっと残業それなりにありますよね・・・?

湊君:そうですね。今の時代全くいいわけないのですがどちらかというと残業多めの仕事ではありますね。「定時で上がれる日なんて年間手で数えられるくらい」なんてことを言っている友人の通関士もいますよ。僕はそこまでですけど。

通関士(従事者)ははっきり言って残業の多い職種!

通関士及び従事者は通関業務を行う会社に属するのが一般的なため

やはりどこに勤めるか、で残業の多い少ないは変わってきます。
しかし、一般的に通関士の仕事は残業が多い傾向にあります。
要因として

・一人当たりの担当件数
・荷主の都合
・時期
・人手不足
・トラブル
といったことが上げられます。

担当の件数による

まず残業の前に通関士は朝が早いです。
多くの税関官署の開庁時間が8:30〜17:15(または17:45)であるため、この時間に合わせて出勤する通関士も多いです。

そして勤める会社によりますが取り扱う件数が多いほど残業は増える傾向にあります。(当たり前ではありますが)

平成29年10月8日からは※輸出入申告官署の自由化に伴い、事務作業の効率化やコスト削減などが期待せれている一方で、通関業務の集約により一人当たりの取り扱い件数の増加により業務量が増え、残業も増えているという意見もでています。

日本の輸出入総額はリーマンショック時にガクンと下がったもののいずれも右肩上がりです。輸入総額が増加している一因が輸入コストの上昇によるものもありますが、取引が増えている=通関業者の抱える件数が増えてきているということも読み取れます。

※輸出に申告官署の自由化
以前は貨物が蔵置されている倉の場所を管轄する税関官署に輸出入申告をするのが原則であったが、AEO事業者においてはどこの税関官署にも申告できるようになった制度

※AEO事業者
税関長が認証・認定したセキュリティ、コンプライアンスの体制が整備された事業者

荷主に左右される

通関業者は荷主から依頼が来てから始めて通関に関する業務に対応することになりますので
荷主の依頼自体が遅かったり、書類内容に不備があり訂正が必要になればそれだけ手配が後ろ倒しになります。

また荷主の都合で納期に間に合わせるためにどうしても至急通関を切らなければならない案件が入ればスムーズに許可になるよう次の日に持ち越さず片付けておかなければならない、といったことも発生します。

今からそんなこと言うの…?

 

輸入貨物の場合、荷主も相手国から船積み書類を入手しなければ通関業者に渡すことができません。
時差や商習慣の違い等で関係でスムーズに連絡が取れなかったり、貨物が到着しているにもかかわらず書類が来ずギリギリになってから手配を行うことになってしまうということもあります。

国際関係の仕事に携わる以上「日本国内だけならこんなこと起こらないのに」と感じることで仕事が止まってしまう、後ろ倒しになってしまうことは出てきてしまいます。

有坂:ちょっと耳が痛い…。

時期による

どの業界かによって一年の中で繁忙期は異なりますが、
例えば中国の取引が多い企業であれば2月の旧正月前の時期は貨物が動くので案件がとても多くなります。旧正月に入ってしまえば中国の工場、企業ほとんどは稼働しなので貨物の搬出も少なくなります。

一方年末年始の場合は他の国は稼働しているため、年明け後の業務は忙しくなる傾向にあります。輸入の場合は正月明けに何本ものコンテナが日本に入り、コンテナ運送や保税倉庫に庫入れするスケジュールの調整に加え大量の申告に追われることもあります。
また食品関係に多く見られますが「旬」があるものは旬の時期に繁忙期を迎えます。

人手が足りない

日本の輸出入の件数は増加の一途をたどっていますが通関士、従事者の人数が追いついていません。
物流の専門誌カーゴニュースによると2007年から2017年の10年間の間に輸出入許可件数は6割増加している一方で通関士の数は1割程度しか増えていないということです。

輸出入許可件数の推移をみると、07年は3273万5000件(輸入1766万7000件、輸出1506万8000件)だったが、17年は5332万7000件(輸入3411万3000件、輸出1921万4000件)で10年間で62・9%増えた。一方の通関士数は07年は6919人、17年は7848人と13・4%しか増えていない。
(出典 ズームアップ 業務量増大で通関士も人手不足?/物流の専門誌 カーゴニュース http://cargo-news.co.jp/cargo-news-main/1076)

通関士の数が増えていないにもかかわらず、輸出入件数は増え続け、加えて「担当の件数による」の部分でも取り上げましたように輸出入申告官署の自由化に伴う業務の集約により一人当たりの担う件数が増えていることも残業増大に拍車をかけています。

働き方改革などが世間では叫ばれていますが会社によってはいまだ少数精鋭で回しているところも少なくありません。

しかし解決策として通関業法基本通達改正で通関業務の「在宅勤務」が有効に働くのではないかという見方もされています。以前は税関の許可が下りた営業所でしか働くことができませんでしたが、2017年10月から通関業務に従事する通関士、従事者の在宅勤務ができるよう改正されました。育児や介護を担う人達も働きやすくなることが期待されています。

在宅勤務を行うにあたり一定の要件を満たす必要があり、セキュリティ対策の面からもまだまだ大幅に在宅勤務の通関士、従事者が増えてはいませんが、働き方のスタイルが多様化から在宅勤務へのシフトは増えていくと予想されます。

湊君:確かに育児や介護を理由に働けない、というのも大きな問題ですがそもそもの自由のきく身ならどんだけでも働けるよね?という雰囲気が問題だと思います。会社によって徐々に変わってきてはいますが世の中がもっと過剰労働が減るようになればいいなと思います。

トラブル

どんな仕事でもそうですが毎日順風満帆とはいきません。
貿易は海外が関係する仕事のため「なんでこんなことが」という理由が原因でトラブルになることも少なくはありません。(直接海外の工場や会社とやりとりするのは荷主ですが、その結果が通関に関わることでしたら通関士にも関係してきますので)

また取引先に関係なく、海外情勢の関係で貨物が経由国には入れない、荷揚げ港から貨物が引き取れないといったようなトラブルも発生することがあります。国内での処理であれば税関に対しての意見や事情説明などが必要になった際、荷主には行うことはできないため通関士にて対応することになります。

通関士は通関業務のプロのため通常業務のみならずトラブル時もどのように対処するかが腕の見せ所ではありますが、こういったことが残業を引き起こしてしまうのもまた事実です。

有坂:本当にね、通関業者さんには助けられてます。

湊君:はは、まぁ仕事ですからね。でも有坂さんも体感していると思いますが貿易業界ってちょっと時代が遅れてますよね?昔ながらがいいみたいなところありません?

有坂:そうですね、この時代に書類が、「紙」が主役みたいなところありますし。こんな便利な時代になったのだからもう少し効率よく仕事が処理できる方法がありそうなものですが。

湊君:じゃあ具体案を出せと言われるとなかなか難しいですけどね笑しかしいつまでもあまり昔ながらのやり方が続いていくとは考えにくいです。この「昔ながら」が変わってくれば残業等も減少してくるのではないかと少し期待しています。

 

業界の「体質」の変化はなかなか個人が頑張って変わるものでは無いので難しいところはあります。しかしここ最近の「働き方」に関する考え方の波に乗って「本当に必要な作業なのか、システムで代替えでいないのか」といった考えがいずれ多く出てくるのではないかと考えられます。

「在宅勤務」制度の話からもすこしづつでも期待できると言えます。残業が多い貿易業界のイメージが近い将来変わるかもしれません。