通関士

通関士試験は突破する意味はあるのか

こんにちは
有坂です。

今回は貿易関連の資格で唯一の国家資格である「通関士試験」は受けた方が良いのか!?です。
通関業務の仕事自体には通関士の試験を受けていなくても携わることは可能です。
合格率が都市によっては違うとはいえ大体10%前後であることが多い通関士の国家試験。
しかも働きながら勉強するのは結構大変でしょうし、何より「机上の知識より現場の経験」が大事だと、仕事をしていると感じます。

それでも「通関士の国家資格」を取得するのはやはり意味があるものなのでしょうか?

湊君:僕も「机上の知識より現場の経験」にすごく賛同しますが、じゃあ通関士取得しなくて良いかどうかで考えるなら、
迷っているなら挑戦した方がいい、と思いますね。

通関士試験とは

通関士は貿易業界の中で唯一の国家資格です。通関士として必要な知識、能力があるかを判定するために行われています。

通関士試験は年に1回行われており、日程は10月の上旬とされていますがだいたい第一日曜です。(しかし2018年は第二日曜でした。上旬としているだけありこのように第一日曜でない年もあります。ちなみに2019年は10月6日で第一週日曜でした)

申し込み期限は7月から8月上旬くらいまでとなっており、北海道、宮城、新潟、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡、熊本、沖縄で実施されます。合格発表は11月〜12月です。
科目は3つに分かれており①通関業法②関税法③通関実務で構成されています。

①通関業法(選択式・択一式)50分
②関税法 (選択式・択一式)100分
③通関実務(選択式・択一式・計算式)100分

いずれもマークシート方式です。

ちなみに、3つの科目で構成されていますが特定の人は②、もしくは②と③が免除になります。
その特定人とは次の通り。

〔科目の免除〕
通関士試験は、3科目の試験により実施されていますが、次に該当する方は試験科目の一部免除を受けることが可能です。
1
.通関業者の通関業務又は官庁における関税その他通関に関する事務(税関の事務及びその監督に係る事務をいう。)に従事した期間が通算して15年以上になるとき
試験科目の下記(1)及び(2)の2科目免除
2
.通関業者の通関業務又は官庁における通関事務(税関における貨物の通関事務(その監督に係る事務を含む。)をいう。)に従事した期間が通算して5年以上になるとき
試験科目の下記(2)の1科目免除
なお、通関業者の通関業務及び官庁の関税に関する事務等の中には、特別の判断を必要としない機械的事務(例えば、自己の判断を要しない単なるパソコン等への入力事務及びタイプ事務、使送事務、貨物の内容点検業務等)は含まれないことになっています。
〔試験科目〕
(1)関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)
(2)通関書類の作成要領その他通関手続の実務
(3)通関業法
(出典/通関士試験科目の一部免除(カスタムスアンサー)/税関/http://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/shiken/8009_jr.htm)

並びが違って少々「おや?」となりますが試験の順番は①通関業法②関税法③通関実務となっており通関士試験の案内詳細にもこの順で記載されていますが免除に関する部分では順番が入れ替わっています。これはややこしいですね。

通関士試験で一番難易度が高いのは「通関実務」ですがこの通関実務の試験を通関業者、及び官庁で5年以上働いていれば受験免除となるということなのです。さらに15年以上であれば「関税法」も受験免除となります。

通関士試験の詳細は毎年7月上旬に公告され、税関ホームページにも載ります。
日程や試験時間等、例年とは異なることもありますのでその年の試験詳細は7月に確認することが必須です。

通関士試験の勉強方法

通関士試験の勉強方法は大きく分けて「スクール」「通信教育」「独学」があげられます。

①スクール
資格取得のための授業を開講しているスクールへ通う方法です。
スクールに通う最大のメリットは直接講師へその場で質問をすることができることです。

 

教科書を読み込んでも、授業動画を聞いてもどうも理解できない箇所を授業中、授業後に質問すればわからないことをすぐに解決できるためどんどん次の勉強に進めます。また面と向かって口頭でのやり取りは細かいニュアンスも伝えやすいですし、講師もどんなところがわからなくて質問しているのか生徒の疑問を汲み取りやすいのでわかりやすく解説できます。

デメリットはやはり価格と時間です。
直接授業が受けられるスクールは理科が深まりやすいですがやはり価格が高くなってしまいます。

また、資格スクールはどこにでもあるわけではなく大体主要駅に構えていることが多いためわざわざ行かなくてはなりません。移動のための時間もかかりますし、授業に合わせて通わなければいけないためスケジュール管理も必須です。

しかしいつも三日坊主、何か強制されないとだらけてしまう、という人は強制力の高いスクールに入ってしまった方が最終的に時間もお金も無駄にならずに済む傾向にあります。

②通信教育
DVDや講義の配信動画を見つつ教科書も合わせて使用し自分で勉強するスタイルです。
授業を開講しているスクールで通信教育カリキュラムを設けているところもあります。

メリットは自分のタイミングのいい時に勉強ができることです。動画配信スタイルであればネット環境のあるところで視聴可能ですので自宅でもいですし外出先でも勉強ができます。

通信教育カリキュラムにはサポートとしてメールで質問・疑問が可能であったりするのでわからないことがあってもアドバイスを受けることができます。

デメリットとしては完全自分のペースなのでだらけてしまうことのないようしっかりと意志を持って取り組むことです。

講義内容と教科書、サポート体制をフル活用して自分の生活ペースに合わせて勉強ができる人にはオススメの勉強方法です。

 

③独学
書店に通関士試験対策のテキストを購入して自分で勉強する方法もあります。

独学のメリットは何と言っても安く済みます。そして通信教育と同じように自分のペースでどこでも勉強が可能なためスクールに通うなどの時間がない方にも取り組める勉強方法です。

しかし通関士試験の内容はかなり難題のため、通関士・従事者として実務を積んでいる方におすすめの勉強法で、今まで経験のない方にはあまりお勧めできる勉強法ではありません。

私たちの身の回りの商品は海外からの輸入品が多いものの実際の通関業務などは普通に生活している分には一切見ることも聞くこともないことです。

経験のない方にはテキストを読んでも実際のことがイメージしづらいためその状況で勉強し続けるモチベーションを保つのがまず難しいです。

その上で毎日働いている社会人は勉強の時間を確保するのも難しいです。なかなか勉強が先に進まなくなってしまいます。中には頑張って1から独学で試験を突破する強者も確かにいますが相当な要領の良い人でしょう。

湊君:実務経験者であれば独学でいけると思いますけど、、、独学のデメリットはちゃんと勉強が続くかどうかですね。一人で黙々とかだと人によっては精神的に「無理」ってなりそうです。

通関士試験を突破する意味はあるのか

通関業者にて籍を置き初めて通関業務が行える通関士、そして業務の内容によっては通関士資格のない従事者と呼ばれる人たちも通関業務を行えます。果たして通関士の資格は苦労して取得して意味があるのでしょうか?

①資格取得手当てが出る。
通関士資格を取得していると手当てが出ます。(会社によっては出無いところもあるそうですが)
勤め先にどのくらい手当てが出るのか差がありますが大体1万〜/月が多いようです。
ぱっと見すごく高級な手当てではありませんが毎月あるのと無いのではかなり違ってきます。

②通関士の資格を持っていないとできないことがある
通関業者の仕事は資格のない従事者も行えますが、例えば従事者の作成した申告書はそのまま税関には提出できません。必ず通関士の確認を経た上で提出されます。どんなに経験のあるベテラン従事者でも「従事者」であり、通関士ではありません。

税関から「通関士の記名捺印を」「通関士の説明を」「通関士の…。」と言われるとどんなに経験豊富な従事者も対応することはできません。
もちろん経験と知識は仕事を行う上でとても重要ですが資格がないゆえに実力があるのに対応できない、ということもあるのです。

③転職時に有利に働く
通関業法にて通関業を行う会社は通関士を一人以上置かなくてはならないと決められています。
通関業を生業としているどの営業所も通関士が急に一人もいなくなるなんてことはないでしょうが、人の入れ替わりはありますし、企業側も時に通関士という資格に重きを置いて採用することもあるようです。

実務経験もあって資格を持っていれば一番良いですが、経験は後から積めば良いからという考えの企業も少なからずあるようです。

通関業以外の企業、例えば貿易関係の事業がある商社やメーカーに異なる業者で転職する際でも通関士の実務とともに通関士の資格を持っていれば貿易に関する即戦力とみられる一つの判断基準になります。
またその企業が将来的に自社で輸出入通関を考えていれば「最低一人おかなければならない通関士」のポジションとしての採用になるかもしれません。

湊君:資格っていかに活かせるかだと思いませんか?

有坂:趣味とかでなく仕事に活かそうと思うなら確かにそうね。資格ばかりとって役に立てられてなかったらお金と時間を無駄にしちゃてるというか。

湊君:そうそう。資格取るのが趣味ならそれはそれでいいんですけどね。僕は通関士試験に関していえば貿易の仕事をしていて興味があるならとっておいていいと思うんです。

実際に教科書の内容がそのまま仕事に活きることがあればそうでないことも多いですが知識を取り入れるということに関しては一役かっています、絶対に。

また会社によって手当ついたり、転職の面接の時など初対面の人に自分を知ってもらう材料にもなると思うんです。だからこそ実力は伴わなきゃいけないとは思います。

有坂:実際に資格取得者だから期待したらそうでもないみたいなこともあると「資格なんてとっててもねぇ」ってなったりするよね。

湊君:例えば海外営業をメインにしていて通関士試験を持っていたら「海外営業の経験がある」だけではなく「海外営業の経験があって通関関係の実務経験はなくても少し知識はある、また勉強する意欲はある」ていう見方になるかもしれませんよね。

正直仕事しながらの勉強は大変ですし、時間も取られます。勉強の仕方のよってはお金もかかります。だから興味のない人はやらなくていいと思います。

 

資格は持っているだけでは宝の持ち腐れです。その資格を使ってどのように行動するかでかけた時間と費用を回収できます。そのため湊君のいう通り興味がなければやらないほうがいいでしょう。

しかしこういうところでチョットずつ過去の自分とこれからの自分に差がついていくのかな、という気もしませんか?

こちらの記事を読んでいただいている方は少なくとも貿易や通関の仕事に興味をお持ちの方だと思います。皆さんは通関士試験についてどのようにお考えだったでしょうか?1年に1回しか受験のチャンスがない通関士試験。湊君のいう通り、迷っているなら挑戦することを応援します!